一首評の記録
-
一首評〈第161回〉
橋爪志保『地上絵』 ラメ付きのスーパーボールに住んでいるひとかよきみは地球ではなく スーパーボールが自分の生活から失われて何年になるだろう。スーパーボールはわれ…
-
一首評〈第160回〉
笹井宏之『てんとろり』 天国につながっている無線機を海へ落としにゆく老婦人 老婦人は大事な誰かに先立たれたのだろう。愛した人や親戚、友人などが考えられる。もし…
-
一首評〈第159回〉
花山周子 『風とマルス』 水鳥の潜りしのちをたゆたえる海はおそろし音立てなくに 実際のところ、祭りの祝祭感がもっとも高まるのは、祭りそのものが行われ…
-
一首評〈第158回〉
佐クマサトシ 「すべての可塑的な者たちに告ぐ」 本当に大事なものはいつだって名前 それが二つある犬 2011年・2012年にロサンゼルスで行われた初音…
-
一首評〈第157回〉
高野公彦 「水木」 青春はみづきの下をかよふ風あるいは遠い線路のかがやき 高校時代、仲間と青春の定義について語ったことがある。そういう青臭い議論の常として、どう…
-
一首評〈第156回〉
河野裕子 「京都うた紀行」 来年もかならず会はん花棟(はなあふち)岸辺にけぶるこの紫に この歌がきっかけで楝の花を知った。5月から6月の梅雨前に咲く淡いうす紫の…
-
一首評〈第155回〉
星野さいくる 「daisy」 『心の花』二〇一九年十月号より ひとつずつ慈しまれた花弁が飛び立つ角度に開くdaisy 作者は小学校の教員。教室の子どもたちにいま…
-
一首評〈第154回〉
光森裕樹 『鈴を産むひばり』 ゼブラゾーンはさみて人は並べられ神がはじめる黄昏のチェス 少しの想像によって、ありふれた風景が全く違って見えるときがある。 通学…
-
一首評〈第153回〉
大森静佳 「阿修羅」『京大短歌24号』 一月のエスカレーターめくるめく泣きそうな手だと思ってしまう 異様な歌だと思う。エスカレーターを「泣きそうな手」だと認識し…
-
一首評〈第152回〉
はたえり 「交差点」『塔』七月号 あなたからあなたの腕は生えていて途切れつつ剥くりんごの皮を 本歌は『塔』七月号に掲載されている第九回塔新人賞候補作「交差点」の…