一首評の記録
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一首評〈第85回〉
加藤治郎 『ニュー・エクリプス』 いつかって言わないでくれ ゆっくりと目の高さまで煙草をあげて この歌をみつけた瞬間、こんな女性になりたいと直感が言った気がした…
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一首評〈第84回〉
澤村斉美 「マンゴー栽培」(『夏鴉』) 不信は長く人を支へてきたといふその人の持つ閑かなフォーク フォークの持ち方ひとつからその人の遍歴に思いを馳せる、簡単に…
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一首評〈第83回〉
平岡直子 『町』創刊号 黒鉛が紙のおもてを滑ってこれは君が燃えても燃え残る雪 「ではなく雪は燃えるもの・ハッピー・バースデイ・あなたも傘も似たようなもの」(瀬戸…
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一首評〈第82回〉
岡井隆 『朝狩』 あわれいま束を解かるる花茎のつゆけき交叉抱きあげむとす 第三歌集『朝狩』の「汚名・花から鳥へ」一連より。「花束が、解きほどかれるところを見て…
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一首評〈第81回〉
服部真里子 『短歌研究』2009年9月号「天体の凝視」 沈黙はときに明るい箱となり蓋を開ければ枝垂れるミモザ 通っていた高校の、一般教室の棟から理科棟へと続く…
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一首評〈第80回〉
岡井隆 『大洪水の前の晴天』 栄光は死後にゆつくりと訪れて夕ぐれに咲く花の大きさ 「死後の栄光」について、今年は多くの人が考えたのではないだろうか? ゆっくり…
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一首評〈第79回〉
林和清 連作「菩薩の森」/『玲瓏59号』 ほの暗い菩薩の森へわけいりぬどれもが永遠をささへあふ枝 山の日暮れは早い。空が明るくとも、林冠の下はどんどん影を濃く…
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一首評〈第78回〉
雪舟えま 連作「吹けばとぶもの」/『短歌研究』2009年9月号 ホットケーキ持たせて夫送りだすホットケーキは涙が拭ける 一読して、えっ、ホットケーキ。と思う。同…
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一首評〈第77回〉
河野裕子 『森のやうに獣のやうに』 くすの木の皮はがしつつ君を待つこの羞やさしさも過ぎて思はむ 待ってもらうよりも待つほうが断然好きだ。掲出歌は待ち合わせを詠っ…
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一首評〈第76回〉
大滝和子 『銀河を産んだように』 大海わたつみはなにの罪ありや張りめぐるこの静脈に色をとどめて この歌を読んで手首を見た。あ、ほんとだ、海の色!とはっとした。わ…