一首評の記録
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一首評〈第88回〉
盛田志保子 『木曜日』 一心に糸を巻く夜 死ぬ時は胸のところが遠くなって死ぬ まず思い浮かぶのは、黙々と糸車に向かって糸を紡いでいる女の姿である。「糸を巻く」は…
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一首評〈第87回〉
下澤静香 「首筋」/『京大短歌』16号 モルディヴの形象をなぞる地図の上雨はそのまま止まないらしい 作中主体は、モルディヴ(インド洋沖の島国)の形象を地図の上で…
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一首評〈第86回〉
吉田隼人 「二十三人」/『早稲田短歌』三十九号 立ちならぶこころの病気ビルはまだどの窓も灯をともしてゐたり 昼と夜の境目を明示することなんて、いつだってどうし…
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一首評〈第85回〉
加藤治郎 『ニュー・エクリプス』 いつかって言わないでくれ ゆっくりと目の高さまで煙草をあげて この歌をみつけた瞬間、こんな女性になりたいと直感が言った気がした…
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一首評〈第84回〉
澤村斉美 「マンゴー栽培」(『夏鴉』) 不信は長く人を支へてきたといふその人の持つ閑かなフォーク フォークの持ち方ひとつからその人の遍歴に思いを馳せる、簡単に…
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一首評〈第83回〉
平岡直子 『町』創刊号 黒鉛が紙のおもてを滑ってこれは君が燃えても燃え残る雪 「ではなく雪は燃えるもの・ハッピー・バースデイ・あなたも傘も似たようなもの」(瀬戸…
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一首評〈第82回〉
岡井隆 『朝狩』 あわれいま束を解かるる花茎のつゆけき交叉抱きあげむとす 第三歌集『朝狩』の「汚名・花から鳥へ」一連より。「花束が、解きほどかれるところを見て…
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一首評〈第81回〉
服部真里子 『短歌研究』2009年9月号「天体の凝視」 沈黙はときに明るい箱となり蓋を開ければ枝垂れるミモザ 通っていた高校の、一般教室の棟から理科棟へと続く…
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一首評〈第80回〉
岡井隆 『大洪水の前の晴天』 栄光は死後にゆつくりと訪れて夕ぐれに咲く花の大きさ 「死後の栄光」について、今年は多くの人が考えたのではないだろうか? ゆっくり…
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一首評〈第79回〉
林和清 連作「菩薩の森」/『玲瓏59号』 ほの暗い菩薩の森へわけいりぬどれもが永遠をささへあふ枝 山の日暮れは早い。空が明るくとも、林冠の下はどんどん影を濃く…