一首評の記録
-
一首評〈第81回〉
服部真里子 『短歌研究』2009年9月号「天体の凝視」 沈黙はときに明るい箱となり蓋を開ければ枝垂れるミモザ 通っていた高校の、一般教室の棟から理科棟へと続く…
-
一首評〈第80回〉
岡井隆 『大洪水の前の晴天』 栄光は死後にゆつくりと訪れて夕ぐれに咲く花の大きさ 「死後の栄光」について、今年は多くの人が考えたのではないだろうか? ゆっくり…
-
一首評〈第79回〉
林和清 連作「菩薩の森」/『玲瓏59号』 ほの暗い菩薩の森へわけいりぬどれもが永遠をささへあふ枝 山の日暮れは早い。空が明るくとも、林冠の下はどんどん影を濃く…
-
一首評〈第78回〉
雪舟えま 連作「吹けばとぶもの」/『短歌研究』2009年9月号 ホットケーキ持たせて夫送りだすホットケーキは涙が拭ける 一読して、えっ、ホットケーキ。と思う。同…
-
一首評〈第77回〉
河野裕子 『森のやうに獣のやうに』 くすの木の皮はがしつつ君を待つこの羞やさしさも過ぎて思はむ 待ってもらうよりも待つほうが断然好きだ。掲出歌は待ち合わせを詠っ…
-
一首評〈第76回〉
大滝和子 『銀河を産んだように』 大海わたつみはなにの罪ありや張りめぐるこの静脈に色をとどめて この歌を読んで手首を見た。あ、ほんとだ、海の色!とはっとした。わ…
-
一首評〈第75回〉
フラワーしげる 『短歌研究』2008年9月号 きみが十一月だったのか、そういうと、十一月はすこし笑った 上句の、詰問とも嘆息ともつかないつぶやきの中には、意外…
-
一首評〈第74回〉
魚村晋太郎 『花柄』 あなたが退どくとふゆのをはりの水が見えるあなたがずつとながめてた水 魚村晋太郎の『花柄』を私は主体と主体の中の「あなた」をめぐる物語とし…
-
一首評〈第73回〉
土岐友浩 Blueberry Field ウエハースいちまい挟み東京の雑誌をよむおとうとのこいびと 土岐さんの詩観がすこしずつ垣間見えたのは、去年参加した京大…
-
一首評〈第72回〉
我妻俊樹 「水の泡たち」 時計屋に泥棒がいる明け方の海岸道をゆれていくバス 「ことばの意味内容と響き、それからリズムがあいまって、読者を想像の世界に誘うこと。こ…