一首評の記録
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一首評〈第95回〉
福井和子「始まりはいつも」/「短歌」1999年11月号 突然に『もろ人こぞりて』鳴り出だしティッシュ受け取り損ねて歩く あけましておめでとうございます。新年が始…
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一首評〈第94回〉
佐伯裕子『あした、また』 パラソルをかざしてゆくよ有史より死者は生者の数を凌しのぐに 最近、私の鞄にはいつも現代短歌文庫『佐伯裕子歌集』が入っているので、今回…
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一首評〈第93回〉
千種創一「お水いりますよね」/『dagger‡3』 広辞苑第三版の中にいて闘いやめぬアラファト議長(1929~) ちょっと個人的な話をさせて欲しい。ある時、弟…
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一首評〈第92回〉
東直子『青卵』 怒りつつ洗うお茶わんことごとく割れてさびしい ごめんさびしい 今年になって立て続けに我が家の陶器が割れた。まずは丼の蓋、次にごはん茶碗、さらに…
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一首評〈第91回〉
光森裕樹 『鈴を産むひばり』 そこだけがたしかにひぐれてゐる窓辺きみは林檎の光沢を剥く 『鈴を産むひばり』は美しい本です。さわってもひらいても心地良くて、すっと…
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一首評〈第90回〉
服部真里子 『町』3号 はばたきのシステムという美があってそれに指先だけ触れている 鳥、例えば文鳥などの翼にそっと触れている場面を想起させる。この歌の主眼は、「…
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一首評〈第89回〉
矢頭由衣 連作「ヴォイド」 直線を引き続けると前触れなく途中の道で日暮れに遭う 梅雨に入りました。何日か前の新聞に書いてありましたが、からだにもカビが生えること…
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一首評〈第88回〉
盛田志保子 『木曜日』 一心に糸を巻く夜 死ぬ時は胸のところが遠くなって死ぬ まず思い浮かぶのは、黙々と糸車に向かって糸を紡いでいる女の姿である。「糸を巻く」は…
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一首評〈第87回〉
下澤静香 「首筋」/『京大短歌』16号 モルディヴの形象をなぞる地図の上雨はそのまま止まないらしい 作中主体は、モルディヴ(インド洋沖の島国)の形象を地図の上で…
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一首評〈第86回〉
吉田隼人 「二十三人」/『早稲田短歌』三十九号 立ちならぶこころの病気ビルはまだどの窓も灯をともしてゐたり 昼と夜の境目を明示することなんて、いつだってどうし…