一首評の記録
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一首評〈第105回〉
北川浩久『オドロキ』 カーテンが窓の向こうにあふれいで風のかたちを示していたり 巻雲とよばれる雲を、ある子供がそんなことは無視してしまってスウスウ雲と命名した。…
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一首評〈第104回〉
東直子『春原さんのリコーダー』 廃村を告げる活字に桃の皮ふれればにじみゆくばかり 来て 廃村を告げる活字、どこかの村が一つ無くなってしまうのだろうか。作中主体は…
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一首評〈第103回〉
吉川宏志「塔」2011年5月号 黒竜江アムールに飛び立ちゆかむ白鳥を思えり放射線をよぎりて アムール川(Амур 、アムール、黒竜江)はユーラシア大陸北東部を流…
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一首評〈第102回〉
野樹かずみ(『もうひとりのわたしがどこかとおくにいていまこの月をみているとおもう』洪水企画) お誕生日会の三角帽子かぶった子と物乞いする子 強化ガラスを隔て 二…
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一首評〈第101回〉
早川晃央「それだけのこと」/「コスモス」9月号 トランプのどれか一枚なくなった途端残りも紙くずとなる 妙な魅力がある一首だと思った。 なんというか連作の中でこ…
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一首評〈第100回〉
小島ゆかり『ヘブライ歴』 わが肩に触るる触れざるゆふぐれの手があり少し泣きたい今は 他者が私をかすめるとき、その存在への希求はとりわけ大きく、急速に膨れ上がる…
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一首評〈第99回〉
大森静佳「草花展」 われの生まれる前のひかりが雪に差す七つの冬が君にはありき さ よ う な ら 短歌を読んでいる時。その文字列が発するメッセ…
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一首評〈第98回〉
二又千文「道々に咲く」/『pool』vol.7 みずいろのリュックサックを背せなにして吾子は少女となる交差点 私には四歳の甥がいる。半年おきに帰省すると、彼はい…
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一首評〈第97回〉
奥日光 佐藤佐太郎『群丘』 かすかなる鱒ますといへども落雷に生きのこり体からだ曲りておよぐ 自然を詠うとき、もっとも大きな武器となるのは“技術”であると思う。…
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一首評〈第96回〉
斎藤茂吉『赤光』 ゆふ日とほく金にひかれば群童は眼つむりて斜面をころがりにけり 斎藤茂吉の歌のよさは今の私にはわからない。よく引かれる有名な歌を含め、『赤光』を…