一首評の記録
-
一首評〈第121回〉
俵万智『サラダ記念日』 「西友」の看板だけが明るくて試験監督している窓辺 つむじばかりが並び、鉛筆を走らせる音、そして時折聞こえる吐息。ずっと見ていると、次第…
-
一首評〈第120回〉
明石海人『白描』 銃口の楊羽蝶あげははつひに眼じろがずまひるの邪心しばしたじろぐ 銃口にアゲハが止まっている。微動もしない。動かない。狩りの場面だろうか、主体が…
-
一首評〈第119回〉
築地正子『鷺の書』 翔ぶ鳥はふりかへらねど廃船は過去の時間を載せて傾く 鮮やかな2つのテーゼが、接続助詞「ど」の、さり気なくも絶妙のバランス感で繋がれている。…
-
一首評〈第118回〉
江戸雪『百合オイル』(『セレクション歌人3 江戸雪集』より) 思い出を確かめながら渡る橋バックシートにCDなげて 運転する時に気が散るから物を助手席に置いたり後…
-
一首評〈第117回〉
江戸雪「火」/『百合オイル』(『セレクション歌人3 江戸雪集』より) 水の光かげとどめるビー玉死のときに握っていたいもののひとつに 水の光をとどめるビー玉。ビー…
-
一首評〈第116回〉
山階基「近いうちに」/『早稲田短歌四十一号』 帰り道あなたがわたしを覗きこむ顔の角度をみつけてしまう 帰り道に「あなた」が「わたし」を覗きこむ時の角度を作中主体…
-
一首評〈第115回〉
平岡直子「Happy birthday」『早稲田短歌四十一号』※朝日新聞「あるきだす言葉たち」欄二〇一一年二月一日掲載 セーターはきみにふくらまされながらきみよ…
-
一首評〈第114回〉
安田百合絵「オンディーヌ」/『外大短歌 第二号』 人間に恋してしまつた ほのあかりする夕星ゆふづつに打ちあけてみる 「人間に恋してしまつた」?なら、別にいいだろ…
-
一首評〈第113回〉
光森裕樹『鈴を産むひばり』 鈴を産むひばりが逃げたとねえさんが云ふでもこれでいいよねと云ふ 光森裕樹の第一歌集「鈴を産むひばり」の第一首目であり、同歌集のタイ…
-
一首評〈第112回〉
杉崎恒夫『パン屋のパンセ』 卵立てと卵の息が合っているしあわせってそんなものかも知れない しあわせって、なんだろう。不幸でなければしあわせ、というわけではない。…