一首評の記録
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一首評〈第125回〉
辰巳泰子 『紅い花』 いとしさもざんぶと捨てる冬の川数珠つながりの怒りも捨てる 大きな川のある街に住んでみて、同じ川でも夏の川と冬の川では全くの別ものであるとい…
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一首評〈第124回〉
山崎聡子「四号線」(『手のひらの花火』) 目を閉じて音だけを聞く映画にも光はあってそれを見ている 5月に発行された山崎聡子の第一歌集『手のひらの花火』からの一首…
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一首評〈第123回〉
斉藤斎藤『渡辺のわたし』 せつない とあなたの声で言ってみる あなたの耳に聞こえてる声 歌集の最後に収められている連作、「とあるひるね」の中の一首。この歌を単体…
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一首評〈第122回〉
吉田恭大「わたしと鈴木たちのほとり」(「早稲田短歌」42号) ここはきっと世紀末でもあいている牛丼屋 夜、度々通う この文章は一週間で消える幻だ、しかしながら……
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一首評〈第121回〉
俵万智『サラダ記念日』 「西友」の看板だけが明るくて試験監督している窓辺 つむじばかりが並び、鉛筆を走らせる音、そして時折聞こえる吐息。ずっと見ていると、次第…
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一首評〈第120回〉
明石海人『白描』 銃口の楊羽蝶あげははつひに眼じろがずまひるの邪心しばしたじろぐ 銃口にアゲハが止まっている。微動もしない。動かない。狩りの場面だろうか、主体が…
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一首評〈第119回〉
築地正子『鷺の書』 翔ぶ鳥はふりかへらねど廃船は過去の時間を載せて傾く 鮮やかな2つのテーゼが、接続助詞「ど」の、さり気なくも絶妙のバランス感で繋がれている。…
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一首評〈第118回〉
江戸雪『百合オイル』(『セレクション歌人3 江戸雪集』より) 思い出を確かめながら渡る橋バックシートにCDなげて 運転する時に気が散るから物を助手席に置いたり後…
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一首評〈第117回〉
江戸雪「火」/『百合オイル』(『セレクション歌人3 江戸雪集』より) 水の光かげとどめるビー玉死のときに握っていたいもののひとつに 水の光をとどめるビー玉。ビー…
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一首評〈第116回〉
山階基「近いうちに」/『早稲田短歌四十一号』 帰り道あなたがわたしを覗きこむ顔の角度をみつけてしまう 帰り道に「あなた」が「わたし」を覗きこむ時の角度を作中主体…