一首評の記録
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一首評〈第15回〉
片柳香織 『京大短歌12号』 「ナイフ? 何故?」咯什カシュガルの女性ひとは紅き爪真っすぐに立てて白桃割りぬ すっと、鮮やかな映像が浮かびあがる。活気溢れる異国…
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一首評〈第14回〉
西之原一貴 『京大短歌』 13号 頬に風受けつつ走る今もまた何かを忘れてゆくのだろうか 忘却は常に起こっているものではあるが、それを意識する事はない。せわしなく…
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一首評〈第13回〉
上田茜 『京大短歌』 12号 氷砂糖溶けゆくかたちを確かめてすべてあなたのせいだと思う 一読、美しい相聞歌だと感じた。 解釈を迷う部分は殆どない。氷砂糖を、その…
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一首評〈第12回〉
首藤絵美 『螺旋般若』(短歌研究社:2003) わが海の荒れやまぬ夏終わるらし あふむけの蝉返し歩かす 「わが海」は一夏を慣れ親しんだ眼前の海であるとともに作者…
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一首評〈第11回〉
西之原一貴 『京大短歌』 12号 手のひらの石けん小さくほぐれゆくまだ果たせずにいる約束は 浴室かとおもう。ぬれた石鹸を持ちつづけることは難しい。しっかり掴もう…
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一首評〈第10回〉
澤村斉美 2000年6月10日の歌会より 町の灯を遠く指すとき古魔術のむかしは指の先に現る 自分の指をどのように見るか。そこから広がっていく世界の果てしないこと…
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一首評〈第9回〉
柴田悠 1999年6月9日の歌会より あの粒の残していった水みな跡を拾いつづける車窓の雨粒 点々とある雨粒どうしがむすばれて一筋の流れを形成してゆくという、ガラ…
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一首評〈第8回〉
増田一穗 2002年10月14日の歌会より 爪持たぬ夜は満ちたりわが声を喰らへる鳥の止まりゐる針 私を苛み、切り裂くような光の溢れる昼ではない。世界を美しく染め…
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一首評〈第7回〉
澤村斉美 『京大短歌』 13号 海へくだる水を翼で打ちながら群れの中より一羽が発てり 万物は皆、旅をしているのだと思う。海原へと流れる水の旅、翼もて寝ぐらを求め…
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一首評〈第6回〉
澤村斉美 『京大短歌』 13号 鳥を飼っているのはほんとう きみのいない時に放して運動させる 人に見せることのない自分というものは、誰しも持っているものだと思う…