一首評の記録
-
一首評〈第51回〉
塚本邦雄 されど遊星 あはれ知命の命知らざれば束の閒の秋銀箔のごとく滿ちたり 第十歌集の巻頭歌。「知命」は50歳のこと。孔子の「五十而知天命」の裏返しである。一…
-
一首評〈第50回〉
塚本邦雄 靑き菊の主題 イエスは架かかりわれはうちふす死のきはを天靑金あをがねに桃咲きみてり 第九歌集の巻頭歌。この一首からはじまる連作「桃夭楽」は、頭文字が「…
-
一首評〈第49回〉
塚本邦雄 蒼鬱境 遠き萩それよりとほき空蝉の眸まみ 文學の餘白と知れど 塚本の第八歌集は、収録歌数わずか三〇首、発行部数は私家版を除いて二〇〇部、跋、後書きのた…
-
一首評〈第48回〉
塚本邦雄 星餐圖 靑年にして妖精の父 夏の天はくもりにみちつつ蒼し 第七歌集の巻頭歌。しかし、塚本の秀歌選などで取り上げられることは少ない一首である。岡井隆氏は…
-
一首評〈第47回〉
塚本邦雄 感幻樂 固きカラーに擦れし咽喉輪のくれなゐのさらばとは永久とはに男のことば 塚本とは、死後にしか見えたことがない。昨年二〇〇五年の六月九日に、塚本は八…
-
一首評〈第46回〉
塚本邦雄 緑色研究 雉食へばましてしのばゆ再また娶りあかあかと冬も半裸のピカソ 第五歌集の巻頭歌。「娶る」とは、塚本の主要なモチーフのひとつだが、 水球ウォー…
-
一首評〈第45回〉
塚本邦雄 水銀伝説 燻製卵はるけき火事の香にみちて母がわれ生みたること恕ゆるす 四歌集の巻頭歌。この一首については、岡井隆氏が「辺境よりの注釈 塚本邦雄ノート」…
-
一首評〈第44回〉
觜本なつめ 2006年3月12日追い出し歌会より その論の器用大胆かつ不敵名もなきようだ異端か果ては その論は器用で大胆、加えて不敵な、まるで怪盗のような論であ…
-
一首評〈第43回〉
塚本邦雄 日本人靈歌 日本脱出したし 皇帝ペンギンも皇帝ペンギン飼育係りも 第三回現代歌人協会賞を受賞した第三歌集の巻頭歌。そして、数万首におよぶ塚本の歌業のな…
-
一首評〈第42回〉
塚本邦雄 装飾樂句カデンツァ 五月祭の汗の靑年 病むわれは火のごとき孤獨もちてへだたる 第二歌集の巻頭歌。亡き畏友・杉原一司に捧げられた第一歌集、「水葬物語」で…