歌会コメント
卒業生3名と会員6名で追い出し歌会を行いました。各人に宛てた歌を読みながら思い出話をしてゆったりとした時間を過ごし、京短ゆかりのくれないでアマゾネスをいただきました。
詠草
●小野りたさんへ パソコンとリアルを繋ぐ風が吹き何となくお別れの挨拶/武田歩 素直さに憧れていた 飲み込んだ言葉を救ってくれたあなたの/齊藤ゆずか 一匁分の銀貨と引き換へに花をもらひぬ散りゆく花を/早瀬はづき マルゲリータピザを一つの例として幸せのかたちを考えよう 失恋と呼ばぬくらいの失恋の話を聞きたかったです、先輩/小池ひろみ 甘口の辛いカレーでいつだって思い出せるとおもう三月 友達と台湾旅行に行くとして木瓜牛奶(mùguāniúnǎi)探してしまう/三上麦 「小野」や「りた」ではなく君は「小野りた」でこの春京都が失う熟語 自分では見えないはずの瞳の濃さを僕は知ってる 教えてもらった いくつかの嘘をつきあいまず君が左京区からいなくなってしまう 四年間きみに一番似合わない言葉は何か考えていた 十五夜の鴨川デルタは人生にいくつもあるから またね小野りた/真中遥道 両腕を大きく開き陽光の綿毛を飛ばす歌会中に/森井翔太 ●福田紗菜さんへ 暗闇に反響したる海鳴りを臆さずに行くまっすぐな歌/武田歩 柔らかい声が頭で響いてた 鮮やかな書き出しのメールたち/齊藤ゆずか 不意にあなたの 首を思ひぬ ダアリヤを ささふる茎を なでてゐるとき/早瀬はづき 古い詩も暗い記憶も抱きしめて桜吹雪のなかをゆくひと この街にあなたがいるということが春の芽吹きのようにうれしい/小池ひろみ ゆっくりとフレンチトースト食む人で喫茶フィガロの温度が上がる/三上麦 パッキンがあると安心 合宿に福田さんが来てくれたこと/真中遥道 山茶花をさらりと咲かし静まった池の氷を溶かしてくれる/森井翔太 ●月隠いちさんへ どの食も美しくする手のひらで鉢のネリネをがばりと起こす/武田歩 evianを飲んでるところ想像す 白薔薇のような歌に恋して/齊藤ゆずか 花にふくらむ実を吊り下げて無花果の木は実が重たければ手放す/早瀬はづき 雲に月隠れる夜も手作りのいちにちずつを届けてくれる/三上麦 遅刻する友の命を心配しセリヌンティウスが浮き足立つ駅 浅はかな我はいつでも見透かされ仏にちかい静かな瞳/真中遥道 ●萩野花瓶さんへ 蛍光ペン重ねて引いた文字の色みたいな金平糖噛み砕く/武田歩 腰のごとくびれて瓶はかかげたり百合の花とふつめたき顔を/早瀬はづき 「最終的には、ぜんぶ愛だね!」シンプルにこれがほんとうだったらいいな/小池ひろみ 来年も濃紫色のカクテルが飲めるお店があなたを待って/三上麦 ●山田十二階さんへ さて雲は第四コーナー曲がり来てまた緩やかに続く生活/武田歩 積年の京都の記憶に哲学や酒があり時に短歌もあった/三上麦 四階に上がると十二階がいて変な位相について話した/真中遥道 月といふつねに表を差し向ける金貨よいかに冶金(やきん)されしか/早瀬はづき 哲学の薪をアルコールで焚(く)べて白い炎を皆で見てた/森井翔太 ●福田紗菜さん、月隠いちさんへ 鴨川を眺めて恵文社に行って ひかる記憶で繋がってたい/齊藤ゆずか ●皆さんへ 親鳥を雛が勘違いするようにしっくりとくる「真中くん」の声 人波で立ち止まることは難しく春は全てを押し流していく/真中遥道 今思い出せないこともまたいつか思い出す 風を切る歌/布野割歩 蝋燭を1日1つ消してゆき先への道に光を当てる 鴨川を支える小窓から覗くずーっとずっと遠くの光/森井翔太 ○山田十二階さんより現役会員へ 直線に入ったあとの生活で出会った君との3ハロン思う(武田くんへ) 積もる年も途切れつ絶えつ時は来て、続いていくのです、歌も(三上さんへ) 四階で待っていた僕に君が語る感情と表情の同相(真中くんへ) 我が心は真に金なりや汝心せよ輝くもの必ずしも金ならず(はづきさんへ) もし僕が炎で薪が要るならば酒でも思想でもなくて春(森井くんへ) ○小野りたさんより現役会員へ もりいさんの話し始めのためが好き 仕事はためても大丈夫だよ(森井さんへ) 触角で会話していた気がしててアンテナそのまま開いておくね いつもいつもネイル可愛いはづきさん可愛いでしょって笑っていてね(はづきさんへ) 清さ青さに惹き寄せられていく人が後を経たないスモールポンド 好きなもの嫌いなものが近しいと勝手に思っておこがましいね(小池さんへ) 3分で補助輪外しちゃうようにきょうたん任せてしまってごめん 後輩の武田くんには後輩がたくさんできててビックママ小野?(武田君へ) 後輩か友人かもう分からないけれど「むぎちゃん」声に出したい 世界一ズルい作戦勝負しよう期限はとりあえず10年ね(むぎちゃんへ) 無目的日々がどこまで転がるか見届けたかったような気もする 鴨川に飛び込んじゃって躊躇する歳になったら押してあげるね 何回か無視してしまった優しさをスーツケースの奥に入れとく(真中くんへ) 秀才からごく純粋な乙女まで色んなあなたが笑うキャンパス 左京区の姿しているあわよくばずっと京都にいてほしい人(ゆずかちゃんへ) 唐突な天然物のお笑いが今日も京都にこぼされるよう(さなちゃんへ) お守りは猿沢池の水面月近鉄電車で行って喋ろう(せいちゃんへ) コタロウの本音を副音声として1回歌会してみたかった(奥村くんへ) 山口で京都で次は岡山で新玉の虹うすく切り出す ヒモジウス、ハラヘリウスがお隣りの寮から飛んできて暴れてる(渡辺さんへ) 聖夜には百万遍のサイゼリア12階まであるのよ確か(山田さんへ) きょうたんの響きよ続けいつまでもどこかで耳をすませておくね ばたばたと過ごしてしまった生活にとまり木みたいにあったきょうたん 自転車で駆け回ってたこの町にいくつ落とし物をしてるかな(京大短歌全体へ)
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