一首評〈第80回〉

岡井隆 『大洪水の前の晴天』

栄光は死後にゆつくりと訪れて夕ぐれに咲く花の大きさ

 「死後の栄光」について、今年は多くの人が考えたのではないだろうか?
 ゆっくりと、瞼を開けるような時間の流れを感じる。しかし、その先には「過去」が佇んでいるだけである。「過去」は微動だにせず、周囲だけが変化する。
 瞼を閉じる前に「花」に触れることが出来れば、より大きな花を見ることが出来るのではないか・・・と感じたのは私だけではないはずである。

矢頭由衣 (2009年11月1日(日))