一首評の記録
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一首評〈第38回〉
塚本慶子 「花零れり」 落魄と思はぬ日さへ追はれ來てつひに立たされし夏野なりけり 「もともと短歌といふ定型短詩に、幻を見る以外の何の使命があらう。」という『短歌…
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一首評〈第37回〉
紀野恵 『架空荘園』 砂子屋書房:1995 いちぎやうですらりと歌をつくり棄て長い散歩に出やうとおもふ *「出やう」は原文ママ まず、「一行」を旧仮名遣いで平仮…
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一首評〈第36回〉
今橋愛 短歌同人誌 〔sai〕1号歌集 かんたんに「原ばく落とす」とか言うなわらうなマユリーをつれて帰るな 作者がタイ旅行に出かけたときの一連「スクン…
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一首評〈第35回〉
吉村千穂 京大短歌2005年5月25日歌会より 盛られ来し海老最期までプライドのありしと思う緋色の双葉 一読して「緋色の双葉」という表現の鮮やかさに目をうばわれ…
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一首評〈第34回〉
兵庫ユカ 短歌ヴァーサス5号 「歪みのなかに」 かたちだけ質問を待つ 発芽には適さない土としてこの場は わたしがこの歌に関してまず思うのは、切り捨て方の巧さであ…
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一首評〈第33回〉
佐藤りえ 『フラジャイル』 青空のどこか壊れているらしく今日三度目の虹をくぐれり 7月に入る頃から、それまでの渇きを取り戻すようにたくさん雨が降った。夕立も多…
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一首評〈第32回〉
澤村斉美 2000年9月15日の歌会より 谷のテント場に電波は届かない無形の空をぼくらは見上ぐ このホームページの「歌会の記録」では、2000年以降の歌会の作…
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一首評〈第31回〉
大口玲子 『東北』 我は我を見せられず鱏えひがその腹の白さを人に見するほどには 「我」のくり返しと字余りにより、切羽詰まったように始まるこの歌は、二句目の句割れ…
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一首評〈第30回〉
河野裕子 森のやうに獣のやうに たとへば君 ガサッと落葉すくふやうに私をさらつて行つてはくれぬか それは僕が確か小学生くらいの時のこと、担任の先生のもとにクラ…
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一首評〈第29回〉
山崎方代 こおろぎ 一度だけ本当の恋がありまして南天の実が知っております 人間は孤独だ(京大短歌内にもそう言われた方がいる)。そんな孤独な人間が、他者を見つけ、…