一首評の記録
-
一首評〈第31回〉
大口玲子 『東北』 我は我を見せられず鱏えひがその腹の白さを人に見するほどには 「我」のくり返しと字余りにより、切羽詰まったように始まるこの歌は、二句目の句割れ…
-
一首評〈第30回〉
河野裕子 森のやうに獣のやうに たとへば君 ガサッと落葉すくふやうに私をさらつて行つてはくれぬか それは僕が確か小学生くらいの時のこと、担任の先生のもとにクラ…
-
一首評〈第29回〉
山崎方代 こおろぎ 一度だけ本当の恋がありまして南天の実が知っております 人間は孤独だ(京大短歌内にもそう言われた方がいる)。そんな孤独な人間が、他者を見つけ、…
-
一首評〈第28回〉
永田紅 『北部キャンパスの日々』 ときどきの思いのなかを馬がゆく光がものを美しくする 歌集の掉尾をかざる一首。理系の作者らしく、というべきか、下の句で抽象が行わ…
-
一首評〈第27回〉
穂村弘 『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』 ティーバッグ破れていたわ、きらきらと、みんながまみをおいてってしまう 初めて買った歌集で、今でも一番好きな歌集…
-
一首評〈第26回〉
柴夏子 「豊作」一号 眠らむとするころ雨は降り始むことんことんと胸の椎の実 眠りにつくかつかないかの頃、意識がようやく自分の内へと落ちてゆこうとするその時をとら…
-
一首評〈第25回〉
北辻千展 『塔』 二〇〇四年十月号 各階に京都を見下ろす人はゐて風がそよげば白衣がなびく 京都を見下ろせるA棟の渡り廊下 『塔』十代・二十代歌人特集中の連作、「…
-
一首評〈第24回〉
永井祐 第三回歌葉新人賞「冒険」 半そでのシャツの上からコート着て透き通る冬の歩道をあるく 12月です。ので外はとっても寒い。けれど最近はどこへ行っても室内は十…
-
一首評〈第23回〉
錦見映理子 『ガーデニア・ガーデン』(本阿弥書店:2003) でも君の背後にいつも窓はあり咲いているその花の名は何 始まりの『でも』という言葉は何にかかっている…
-
一首評〈第22回〉
岡本かの子 『浴身』 くれなゐのだりあのかたへいやふかき紅に咲く大輪だりあ 夏のおわりに咲く、もっとも色の濃い花がダリアである。一輪のダリアの紅色、そしてそれに…