一首評の記録
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一首評〈第65回〉
宇都宮敦 「くちびるとかスリーセブンとか まばたきとかピアスとか」 手の甲で君のほっぺに触れてみた 君のまぶたが「ふしぎ」と言った ピーリング・ケアは…
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一首評〈第64回〉
東郷真波「発泡ひこうき」 なにひとつ求めぬ腕をしならせてやさしいひとが放つひこうき おそらく紙飛行機であろう。結句「ひこうき」において初めてあらわれるK音が、漠…
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一首評〈第63回〉
喜多昭夫 『青夕焼』 オレンヂを積む船に手を振りながらさびしく海を信じてゐたり 信じる、という言葉を裏づけるのはなにかと考えたとき、実は具体的に指示できる確かな…
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一首評〈第62回〉
宇都宮敦 「ハロー・グッバイ・ハロー・ハロー」 牛乳が逆からあいていて笑う ふつうの女のコをふつうに好きだ 「酔ってるの?あたしが誰かわかってる?」「ブーフー…
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一首評〈第61回〉
東郷真波 連作『発泡ひこうき』 たっぷりのドレッシングの照り返しだけがすべてを愛してくれる 短歌ってなんなんだ、と心細くおもう日がある。わからないことだらけだ、…
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一首評〈第60回〉
増田静 『ぴりんぱらん』 なんでなんで君を見てると靴下を脱ぎたくなって困る 脱ぐね 誰かとつながりたいと思うとき、あるいはつながっていると認識しているとき、それ…
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一首評〈第59回〉
澤村斉美 「黙秘の庭」 遠いドアひらけば真夏 沈みゆく思ひのためにする黙秘あり 「沈みゆく思ひ」の反対は、「思い浮かぶ」発話のいくつか。 われの知る父より父は…
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一首評〈第58回〉
斉藤斎藤 『渡辺のわたし』 くらくなる紐ひっぱりながら横たわりながらねむれますよう起きれますよう 『渡辺のわたし』を読んでいると、斉藤斎藤は歌のなかでしょっちゅ…
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一首評〈第57回〉
笹井宏之 「数えてゆけば会えます」 レシートの端っこかじる音だけでオーケストラを作る計画 一年ほどまえから、レシートを噛むくせがついた。たとえば赤信号の交差点。…
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一首評〈第56回〉
俵万智 『もうひとつの恋』 何もかも<ごっこ>で終ってゆく恋のさよならごっこのほんとの部分 ものすごく痛いところをついてくる、そんな歌だと思う。ひとつの恋が何も…