一首評の記録
-
一首評〈第61回〉
東郷真波 連作『発泡ひこうき』 たっぷりのドレッシングの照り返しだけがすべてを愛してくれる 短歌ってなんなんだ、と心細くおもう日がある。わからないことだらけだ、…
-
一首評〈第60回〉
増田静 『ぴりんぱらん』 なんでなんで君を見てると靴下を脱ぎたくなって困る 脱ぐね 誰かとつながりたいと思うとき、あるいはつながっていると認識しているとき、それ…
-
一首評〈第59回〉
澤村斉美 「黙秘の庭」 遠いドアひらけば真夏 沈みゆく思ひのためにする黙秘あり 「沈みゆく思ひ」の反対は、「思い浮かぶ」発話のいくつか。 われの知る父より父は…
-
一首評〈第58回〉
斉藤斎藤 『渡辺のわたし』 くらくなる紐ひっぱりながら横たわりながらねむれますよう起きれますよう 『渡辺のわたし』を読んでいると、斉藤斎藤は歌のなかでしょっちゅ…
-
一首評〈第57回〉
笹井宏之 「数えてゆけば会えます」 レシートの端っこかじる音だけでオーケストラを作る計画 一年ほどまえから、レシートを噛むくせがついた。たとえば赤信号の交差点。…
-
一首評〈第56回〉
俵万智 『もうひとつの恋』 何もかも<ごっこ>で終ってゆく恋のさよならごっこのほんとの部分 ものすごく痛いところをついてくる、そんな歌だと思う。ひとつの恋が何も…
-
一首評〈第55回〉
枡野浩一 『てのりくじら』 結果より過程が大事 「カルピス」と「冷めてしまったホットカルピス」 句切れ方が王道だと思う。これだけ明快な内容は、このくらい五七の型…
-
一首評〈第54回〉
永井祐 連作「不敗神話」より 「人生は苦しい」(たけし)「人生はなんと美しい」(故モーツァルト) たけしというのは、北野武(ビートたけし)氏のことでしょう。北野…
-
一首評〈第53回〉
下里友浩 『京大短歌』15号 君はひとりでお昼ごはんをたべている あんなところに階段がある 作者は京大生の方ですから、舞台は学生食堂でしょうか。 普通に考える…
-
一首評〈第52回〉
永井祐 連作「1万円」より 大みそかの渋谷のデニーズの席でずっとさわっている1万円 短歌ヴァーサス第9号より。初出は東京の「第5回ガルマン歌会」(2005年5月…