一首評の記録
-
一首評〈第71回〉
江戸雪 『セレクション歌人 江戸雪集』 碧空をうけいれてきただけなのに異形のひととしてそこにいる 『北朝鮮拉致事件 三首』と題されたうちの最後の一首。 どうしよ…
-
一首評〈第70回〉
野樹かずみ 『路程記』 かたちなき憧れゆえに漂着の重油に浮かぶ虹を見ている 作中に虹は、漠然たる希求、かたちなき憧れの象徴としてある。しかし、主体が見ているの…
-
一首評〈第69回〉
水原紫苑 『びあんか』 われらかつて魚なりし頃かたらひし藻の蔭に似るゆふぐれ来たる この歌と出会ったのは高校二年生の、冬の終りだった。学期末の消化試合のような授…
-
一首評〈第68回〉
棚木恒寿 『天の腕』 相撲(すまい)する男すくなくなりしより清さやかなる水は店に売らるる この「天の腕」は、ちょうど1年前の2006年12月、棚木さんご本人に頂…
-
一首評〈第67回〉
光森裕樹 「風のうはずみ」 ひだりうでに鎖をなして連なれる歯形を熱き陽にさらしをり 自傷の歌ととりたい。一首は初句から結句まで区切れをもたず、まるで「鎖」のよう…
-
一首評〈第66回〉
佐藤弓生 『世界が海におおわれるまで』 背にひかりはじくおごりのうつくしく水から上がりつづけよ青年 「おごり」というマイナスの意味でとられることの多い言葉。それ…
-
一首評〈第65回〉
宇都宮敦 「くちびるとかスリーセブンとか まばたきとかピアスとか」 手の甲で君のほっぺに触れてみた 君のまぶたが「ふしぎ」と言った ピーリング・ケアは…
-
一首評〈第64回〉
東郷真波「発泡ひこうき」 なにひとつ求めぬ腕をしならせてやさしいひとが放つひこうき おそらく紙飛行機であろう。結句「ひこうき」において初めてあらわれるK音が、漠…
-
一首評〈第63回〉
喜多昭夫 『青夕焼』 オレンヂを積む船に手を振りながらさびしく海を信じてゐたり 信じる、という言葉を裏づけるのはなにかと考えたとき、実は具体的に指示できる確かな…
-
一首評〈第62回〉
宇都宮敦 「ハロー・グッバイ・ハロー・ハロー」 牛乳が逆からあいていて笑う ふつうの女のコをふつうに好きだ 「酔ってるの?あたしが誰かわかってる?」「ブーフー…