歌会の記録:2024年3月5日(火)

歌会コメント

大学短歌会春合宿2日目。7グループに分かれて吟行を行いました。夜には全体で宴会を行い、会話に花が咲きました。1日目と同様、深夜さらにはオールナイトで歌会が行われました。3日目の午前中に解散でしたが、その後も歌会をしたり、ランチを食べに行ったりと延長戦もありました。参加者の皆様、ご参加いただきありがとうございました。

〈ルート1 金閣寺・北野天満宮・豆腐料理・古民家カフェルート〉 (文責:三上麦)                          班員の一人が三島由紀夫が好きで金閣に行ったことがないということで、当初「北野天満宮コース」だった三上麦班は金閣も取り込んだ欲張りコースとなった。「京都のお店マイスター」こと三上麦のお店コレクションが火を吹き、ランチもカフェもとても良いお店で京都のゆったりした空気を皆で楽しむことができたのではないかと思う。

参考:ランチ「とようけ茶屋」京都市上京区今出川通御前西入紙屋川町822
カフェ「Cafe Olive KITANO」京都市上京区北町651-20

〈ルート2 三条〜京都府立植物園〜恵文社〜銀閣寺〜三条ルート※全て徒歩で移動〉                   大雨の中、植物園の温室で様々な国の植物を眺めたり、京都大学内や北山通り、東大路通り、銀閣寺を散策したりと「とにかく歩き回って京都を楽しむ」吟行でした。(歩行距離約12km)
とても疲れましたがその分一乗寺のラーメンや銀閣寺山道の温かい飲み物が体に沁みました。

〈ルート3 建仁寺・座禅・漢字ミュージアムルート〉(文責:真中遥道)
 グループ3の行程は、建仁寺→東福寺勝竹寺で坐禅体験→手作り洋食屋 里→漢字ミュージアム→バーガーキングでした。良い歌は良い心からということで建仁寺の庭、坐禅体験で良い心を作り、里、漢字ミュージアムで良い刺激を受け、各々いい歌が詠めたと思います。最後はおしゃれな喫茶店に行くつもりでしたが、男五人だったためそんな小洒落たことはせんでええやろということで、寺町通りのバーガーキングに流れ込みハンバーガーを食べて吟行を終えました。とても楽しい時間を過ごせました。みんなありがとう。

〈ルート4 西本願寺・東本願寺・泥書房・選べるご飯とカフェルート〉                         寒い寒いと言いながら、小雨の西本願寺で、三名閣の一つである飛雲閣や国宝の唐門を見てまわりました。最初に西本願寺だと思ってじっくり見てまわったお寺が実は西本願寺ではなくお隣の興福寺だったのもいい思い出です。歌会では、各人の歌の持つ味を味わいながら一つ一つの歌について話しました。ともに吟行に行ったからこそ共有できる景があり、そのシンクロ感が心地よかったです。

〈ルート5 伏見稲荷・宇治ルート〉                                         雨の中でしたが、伏見稲荷大社の頂上まで登るアクティブなルートとなりました。宇治では、その疲れを仏像と抹茶に癒してもらいました。

〈ルート6 小川珈琲・村上隆展ルート〉                                       班員のお許しのおかげで、13:00にホテルを出るスロースタート。班長のせいで唯一の午後スタートとなり申し訳ございませんでした…。まず、小川珈琲で合宿2日目13:00までがテーマの歌で歌会をしました。そして、京セラ美術館で行われていた村上隆展へ。カラフルなお花がたくさん笑っていて、二日酔いの班長は少し攪乱されました。参加者の各々の心が各々の方向に動いたようで良かったです。

〈ルート7 鴨川・出町柳・泥書房ルート〉                                      小雨にふられながら、鴨川で変な生き物を見つけたり、飛び石を飛んだり、うどんを食べたりみんなで休日のような一日を過ごせました。

詠草

〈ルート1 金閣寺・北野天満宮・豆腐料理・古民家カフェルート〉
コピ・ルアクの匂う世界に逃げ込めばカオス風味調のあかるさ/だんごろう

雨のなか豆腐屋並ぶ 振り向けばもうわからない金閣の金/長尾義明

滅びれば語られるだけ 人生に歴史に舌にのせる金箔

手に染みた土の匂いが消えるまで数百年を待つあかい花

いつかまた舟を浮かべて信じたい待たれてここにくる波の端/真宮湊

青鷺は絶海に立てり蓬莱の庭を我が物顔して/森山孝太郎

金閣を折りたたみ傘でゆけば雨はじかれる音に異国語混じる/三上麦

完全を希求する夢/薄曇り/金閣寺はそこにあり、見えない。/三上桃佳



〈ルート2 三条〜京都府立植物園〜恵文社〜銀閣寺〜三条ルート〉
表題のセリフ体にて尊重を示した絵本を手渡したい/瓊

ヤシの根のふくらんだ腹おやゆびでひらいて出れば眠い温室/行宮見月

早口言葉のような名前を持っている外国の樹はねじれて伸びる/武田歩

植物はときどき赤い微笑んでイタリア男豆の木をみる/合田陸



〈ルート3 建仁寺・座禅・漢字ミュージアムルート〉
高僧の年表「寂す」と締められて葬儀で供えられた花の数

○△□で宇宙の根源を 指を重ねた♡で愛を

拍子木で坐禅を終えてゆっくりと時間は目盛りを取り戻していく

学割で100円引きだと話しおり同級生はスーツで働く

知らぬ字が沢山あってそのどれも知ってるように春になってく/真中遥道

瓦屋根に朽ちる雀のふっくらとした肉体に雨音は落ち

板の間へ踏みだす足の幅冷えてわたしが寄せる朝のみじかさ

捨ててゆく花の名前は知らぬまま袋をくくる電柱の裾

文字の声 雨戸の内側からたたく紛争の歴史の並びかた

バーガーキングの霞の中の いつまでも頼れる親を頼っていたい/府田確

冷たさに着地を厭ふ右足をいぶせく思ふ左足あり

恐らくはこちらがフェイク  吐く息の白より白く迫る双龍

あなたさえいればいいのと思うとき不安の休符として痛みは

ビニル傘越しの友らの背は淡く記憶のようで、ようやく会えた

既視感を重ねあわせて未知となるような未来をきみと之きたい/辻村陽翔

風雷を操る者の胸元に乳首を描き入れたい気持ちの日

ねえ聞いてもしよかったら何もないここに水琴窟を建てない?

一二三 半分、いやそれ以上まで 見えない私のバウンダリー

もう春か僕は今でも定食を頼めるほどは大人ではない

五万字のうちの四字で表せる名前で一生、生きていくこと/栗山佳輔

どこまでも連れて行ってよ地の底の雨が滲みないようなとこまで

公共の施設にだけあるビビッドなソファーに癒しを求める勿れ

真っ直ぐに歩けないのね水たまりすらも静かに避けれないのね/師村レイ

難解な漢字の歴史 バーキンの細い階段(しかし頼れる)

焦点を合わせてシャッター切るまでの二次元的な景色の理解

それをすることがメインでない人が握るマイクのゆっくりとした

雨粒のミルククラウン 読みブレが長い議論ののち生まれる/瀬斗みゆき



〈ルート4 西本願寺・東本願寺・泥書房・選べるご飯とカフェルート〉
冬の鷺ひとり立つ朝ほのぼのと伽藍滅びて行灯に雨 /渡邊新月

行灯のなかを燃えゆく蝋燭よ四方を紙に囲まれながら /早瀬はづき

その奥に人の気配がある障子 傘ごしに降っていてもいい雨 /津島ひたち



〈ルート5 伏見稲荷・宇治ルート〉
山道を熊はゆらゆら穴あきの袋から祈りをこぼしつつ/布野割歩

終わらない鳥居は並びランドセルカバーみたいに明るい、ずっと/武藤寛和

万が一こどもできたら厳密に鳥居の数をかぞえてもらう/湯浅桃

海を歩く夢をみているようにただ雨の滴る鳥居をくぐる/工藤鈴音

人の居ぬ売店昏い 力水拝めば横に下る階段/武藤寛和

狛犬の目線は清く宗教味、感じます、はい、詣でています/武藤寛和

雪ならばこちらも手立てがありますよ ロードクリーン太々しいね/武藤寛和

南天の実実実実実実実 なるほどね、春までは君にあげるよ、あげる/武藤寛和

ものごとを断れる人が大物になっていくんだろうなぁピクミン/武藤寛和



〈ルート6 小川珈琲・村上隆展ルート〉
ポッピングシャワー 朝(あした)がつきさして残った酒が口をうごめく/森井翔太

フロントマンをやや滲ませる空間を談笑があまりにたわいない/千百十番

箸を湯に入れて、それきり 手加減を知らない父の麻雀だった/榊隆太

本日は空から水が落ちてきてそれを不思議に思わないでしょう/もやっしー

魔法少女に花をもたせてデザイナーの意匠はひかる 見え透いていて/芒川良

舌でさわれよ 僕が胎の内部に宿してる梅香のランダム/山本要

虹色に光るカメレオン 外敵の警戒色をローラー作戦/もやっしー

未完成という名を持つ完成に花たちはあまりに笑ってる/森井翔太



〈ルート7 鴨川・出町柳・泥書房ルート〉
お品書きの何枚か写真 わたしたちの饂飩食うそれぞれの傾き/寺元葉香

水流の速まる雨の鴨川のとび石を慎重に踏んでいく/松下誠一

ダンボール箱に表紙のしらじらといつかあなたが薦めていた本/船田愛子
  • このページに掲載の歌稿は、作者の許可のもとで掲載しています。
  • 転載などを希望される場合には、京大短歌会のメールアドレスあるいは「お問い合わせ」より連絡ください。作者の意向を確認し、その都度対応を決定してご返信いたします。