歌会コメント
新歓行事として鴨川デルタでの吟行歌会を開催しました。題は「川」と「桜」でした。
詠草
題詠「川」 コンディショナーを流して髪はくらがりの小川となりぬ 花冷えの夜/葉月 東から西から人が合流し無数の扉の並ぶ鴨川/真中遥道 キョロキョロと頭上の華に目もくれず鳥だ虫だと指差す桃川/畠野太誠 川岸にもうたくさんの外国のわらべがあそぶ陽気なデルタ/坂梨誠治 飛石をわたるグリムの軽やかさ小麦色たる童話の足で/野上武仁 鴨川を渡る子供の声聞こう寝てる暇などないことを知る/土田幹久 川底の石を見ていた 僕たちの確かにあり得た結末として/守田真希 春の底に二杯のシェーキ川石はぬるくなりつつ丸くなりつつ/松浦瞭馬 四万十で風に吹かれる鯉のぼりお堀の鯉は目を伏せ泳ぐ/齊藤ゆずか つま先でペダル回せば川べりをひかりの筏ゆらゆらと発つ/小野りた 会いたいを川の水面にこぼすとき光って消えた彗星、きみの/三上麦 昼下がり昨夜見ていた天の川空に描いてもいちど逢瀬/三上麦 鴨川の春に混ぜてよ川縁の花屋で買ったチューリップ/福田紗菜 ボイジャーが太陽系外進むよう川沿い歩くやわらかな午後/朝香瑞希 この川を渡った先に夢はある飛び石を往く少年の蒼/長野響哉 膝小僧もぐりこませて歩く川春の重さを押しのけながら/武田歩 水面から突き刺し乱す白き足暑き川には春雷が隕つ/半空羅深 題詠「桜」 16時。風の角度に前髪をくずしたままで歩く時刻だ/葉月 突然の豪雨にきみを考える桜色のチーク落としつつ/朝香瑞希 さくらんぼ「んぼ」の部分を「んぼ」したら綺麗だねってそれっぽく言う/三上思 叶うなら、かばんの底の花びらに 春亡き後の残り香になりたい/山岸結衣 パスタゆでることだけ上手くなっていく春がゆでたる桜しなびて/野上武仁 この下に死体が埋まっているらしいいつかわたしも桜に還る/長野響哉 咲きそろう桜どれかは罪人抱きゆえに落花に情残るなり/松浦瞭馬 朔太郎氏の靴にじぶんの裸足(らそく)入れて朔太郎氏のくるしみを追う/坂梨誠治 引力は四方八方から降って桜にかかる世界の重さ/武田歩 北からの頼りは荒涼と春は遠きと桜待ちつつ/土田幹久 花吹雪空を見上げて駆け回る 取れた!取れたね 優しく包む/畠野太誠 あなたへの言葉を湛えているつぼみこぼれてしまう時を知らない/小野りた ビギナーズラックなどなく 匿名の(花びらの)その僅かの叫び/ 「んぼ」を消すblossoms と唱えてたおかしな私は散りつつある春/山本大地 春雨のぬるい風にも花は揺れ奏でる音のゆるい旋律/三上麦 葉桜に急かされ夏が走り出す そよ風にブラウスが揺れてる/三上麦 夜明け前 癒えない傷や乾かない涙みたいに花に残雪/三上麦
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