歌会コメント
追い出し歌会。参加者10名。司会は藪内さん。
大森さん、駒井さん、吉國さんの追い出しでした。
また会いましょう。
歌会後は、居酒屋くれないで二次会。現役会員からサプライズの栞のプレゼントをしました。（阿波野）
詠草
01 一首目省略 02 吉夢がやがて王國になるその場所へ平らに落ちてくる日の光 どこか遠くでわたしを濡らしていた雨がこの世へ移りこの世を濡らす 大森静佳 さっきまでのこの世の雨が胸の奥にみずうみとして濡れているだけ 手のひらに何度も何度も書いていた君の名前のさんずいだけを 駒井早貴 きみの名の貝のねむりのしんしんと何度も何度もぼくは波になる 阿波野巧也 03 春雨の箱 笠木拓さんへ 永遠はないよね 月日に皺寄せて木馬のかたわらを歩むひと 阿波野巧也さんへ ソックスをふくらはぎから剥がすときたましいという檻をおもえり 廣野翔一さんへ 守るということの芯までさびしくて虎の額をすべる月光 駒井早貴さんへ 眼がここをこの世にするよ 紅茶には車輪のようなレモン浮かべて 安達洸介さんへ てふてふは複数形のひとりきり 茶房へ傷のように入り来る 吉國さんへ どうしても魚の群れが（そこにいる？）アダムの脳を渉るきらめき 三潴忠典さんへ 紐のように雨を編む掌の華やぎのそこから先はやさしさでしょう 坂井ユリさんへ 笑い声を積むうちきみのみずうみの輪郭が整ってそれから 金山さんへ 図鑑というもっとも静かな本に棲む鳥のはばたき 重ねてしまう 中山靖子さんへ まだ胸に降る火のかけら 文通は白いひかりの嵩へと到る 小林朗人さんへ 日々はポップコーンのような泡立ちで「嫌い」ってとても言葉だったね 藪内亮輔さんへ 一本の牙に雨降る 鋩（きっさき）に声無く〈わたし〉を吊るしてほしい 大森静佳 04 京都水族館にて 寒風の吹き抜ける場所に立ち止まり四人で食べるすいぞくまんを 駒井早貴 05 駒井さん 〈どれほどに傷つくのだろう超えるなら電車からみる有刺鉄線〉 傷ついてしまってもいい境界を越えてあなたに逢えるのならば 吉國さん 〈(本歌省略)〉 悲しみは覆われるだろうやわらかくあなたが雪を積もらせるから 大森さん 〈尊さと遠いは同じことだけど川べりに群生のオナモミ〉 尊いという遠さいとしみ目が眩むような対岸へ向かい始める 坂井ユリ 06 花三束を贈る。Je(呪) t'aime にせものの銀にせものの梅の花それでもよいとおもふのが愛 さよならを云おうか 魚（うを）の眼球のやうな花々胸に散らせて キズナつていいなあと言ひほほゑめり腐つたひまはり腐つたひまはり 獻辞 古典にばかり咲く天上の花へ 〈This poet lies; Such heavenly touches ne'er touched earthly faces.〉 天上の花は抽象（抽象は罪としいへど）どれも華麗に 獻辞 笑顔と向日葵へ 〈好きさ 今ここに逆さの蚊帳開く〉 これからがまさに激しきいなびかり咲かむとすらむ君にされども 獻辞 つめたい森の底へ 〈Nothing.〉 宝石をひとつ置きわすれてきたが取りには帰らない森の底 藪内亮輔 07 もう過去のことになっても場所だけが君の記憶を抱え込んでいる 駒井早貴 ここにいて待っていました いとけないささめきは消えきらめく粒子 飛天は去り、 幾世経て天空へ行いく由言いし火よ、国よ、手よ、来よ。ここに呼べ ひらくなら、逆さから 涼やかな時間の中にあるか厨子理もおおらかな風の音も容れ とどまっていたかっただけ風の日の君の視界に身じろぎもせず 大森静佳 身じろぎもしないあなたの視界には巡る風、還る風いつまでも 笠木拓 08 吉國さんへ クスノキのもとにすらりと風がふく頃合はよし國をいづるとき さっきからトロイメライの替え歌をリピートしている（失恋中です） 駒井早貴 替え歌を繰り返すのをやめました（恋しています）銀座のカフェで テーブルの木目を視野に残しつつ見送る側につねにいたりき 君の死後われの死後にも青々とねこじゃらし見ゆ まだ揺れている 大森静佳 人はいつか見送られるというさだめ出町の柳ゆれて 揺れやまず 三潴忠典 09 中原に鹿を射止めし君なるを識らず語らう日々のたぬしさ 法のごと正しき様はひた隠し柔和なるをうつくしとぞ思ふ 旅立ちの春来にけらし駒いづる若き巣立ちに一盞の酒 金山知広
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