歌会の記録:2000年4月14日(金)

歌会コメント

歌会 参加者数12名
松島綾子さん初参加。

詠草

01 誰もいない旅館の窓はせせらぎも時計も我もとかして黒く  田中克尚

02 穏やかに静かに笑い野洲駅まで送りてくれぬ 髪がのびたね  山内頌子

03 君にうつる花だけは今もきらめいて記憶の海に溶けゆく季節  片柳香織

04 「父親」という看板を負いながら猫背で笑う正社員さん  柴田悠

05 髪も背も煙草くさいねくさいわねくさいと言ひて鼻を添はせつ  澤村斉美

06 「母」という幻想遠き母なりき一人の弱き人間と見ゆ  松島綾子

07 マフラーの揺れる背中の君のゆく通りの信号まっすぐ続く  西之原一貴

08 門口に束ねて出した新聞のくぼみにも花溜まる春の日  水野ふみ

09 残されし私物のゆゑによみがへる人の名のありすすむ昼飯(ひるいひ)  田中あろう

10 白桜は灯火の色に移ろえり元の花街小さき稲荷  島田幸典

11 貪欲な赤毛の彼女の魅力満つ四月の猫の声切れぎれに  杉美和

12 くりばやしにて栗の花さいている去ろう 火花に当たらぬように  棚木恒寿
  • このページに掲載の歌稿は、作者の許可のもとで掲載しています。
  • 転載などを希望される場合には、京大短歌会のメールアドレスあるいは「お問い合わせ」より連絡ください。作者の意向を確認し、その都度対応を決定してご返信いたします。