歌会コメント
鴨川デルタにて今年度初の吟行歌会を実施しました。6名の新入生とともに「桜」と「京都」を題としたテーマ詠を行いました。
詠草
テーマ詠「桜」 花びらが川面を覆い尽くすよりゆっくり見えたきみの瞬き 読みかけの本を閉じれば窓越しに花降りしきる朝の図書室/三上麦 橋梁の影をながれる花びらの群れのゆくえの遠さをおもう/船田愛子 街中にピンクのアルコールが回る 春は非論理的な希望だ/真中遥道 どうか咲けなかった君に咲けた花たちがとどめを刺しませんように/湯浅桃 思ってみる 桜の樹の下に屍体を 屍体を埋めた人の手つきを/森碧輝 すぷりんぐ、すぷりんぐって堤防の桜は湧き出る水のかたちで/布野割歩 葉桜は川べりへ向け黒ぐろと枝を伸ばす葉は震えている/松村幸史朗 登場の機会失くしたキャラクター春には花見でもしてるのか/武田歩 桜は単に花と呼ばれて果実なきネオテニーらのダンスエフェクト/豆川はつみ 花びらに体温はない 小川には太陽だけが光をともす/成山ジュンヤ テーマ詠「京都」 燃やすごみひそかにこころを燃やすごみ明日の朝には市が燃やすごみ/布野割歩 お祭りの夢から醒めて祇園には褻の日々として雨降り続く/三上麦 夕焼けを纏う少女は鴨川の亀を踏んづけ通学路ゆく/湯浅桃 京都とはチョコの小さな詰め合わせ 一つずつ舌の上で溶かして/真中遥道 さくら散る京都をあるく いつだって痛みをうまく伝えられない/船田愛子 古箱には血が流れおり風の無い夜ひとりでにことこと揺れる/津島ひたち ふくろうが枝に並んでいるように夜の喫茶に点々と人/武田歩
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